半生極細手延べうどん『涼か』

細さとコシ、相反するものへの挑戦

これまでにない「夏におすすめのうどん」を造りたい――。半生極細手延べうどん『涼か』は、そんな思いの元に誕生しました。特徴はなんといってもその細さ。暑い夏にもするすると食が進む細麺。それでいて程よい歯応えがあり、麺の旨みもしっかりと感じられる。当製麺所が造る細麺としてもっとも美味しい食感を追求しました。「今までにない味わい」とたくさんのお客さまからご好評いただきました。
しかし1年目の「涼か」にはひとつだけ、造り手にとって満足できない点がありました。それは、温めていただくときの食感です。繊細な食感が持ち味の『涼か』。その細さゆえ、温かいうどんとして調理するとコシが弱くなり、食感に物足りなさを感じてしまうのです。冷しうどんとしては申し分なく、「爽やかな夏麺」と一定の評価をいただきましたが、麺屋として課題を見つけたからには麺の品質に妥協することはできません。どんな食べ方でも文句なしに美味しい細麺を実現したい。こうして『涼か』は、昨年原材料から見直して生まれ変わり、現在の冷たくしても、温かくしても美味しい麺になりました。

鍵を握るのは「小麦」選び

最大のポイントは、原料となる小麦の見直しです。昨年『涼か』に使用したのは最上級ランクのオーストラリア産の小麦品種。「いいものを使えばいいうどんができる」との考えから徹底して質の高さにこだわったのですが、実はその上質さが麺をやさしくしすぎてしまったのです。大切なのは、求める麺に最適な素材を使うこと。そう気づき、小麦を一から探し直して辿り着いたのが北海道産の小麦です。さらに原料の配合や製造工程も見直し、試作を繰り返した結果、ついに『涼か』のこだわりの細さと理想の食感の両立が実現しました。

 

二種の国産小麦

いくつもの候補の中から見つけ出したのは、強さのある麺を造ることができる良質な北海道産小麦です。これに合わせるのは、宮城県の推奨銘柄となっている『あおばの恋』。硬質で粉にしやすく、優れた製麺適性を持ちます。2種類の国産小麦を最適な配合でミックスすることで、細くてもコシのある新たな『涼か』の土台を造り出すことができました。

塩釜産の藻塩

宮城県塩釜産の『塩竃の塩』は、地元に伝わる古代の製法にならい、栄養豊富な松島湾の海水と海藻(ホンダワラ)を原料に手造りするミネラルたっぷりの藻塩です。10時間以上かけて海水を煮詰める間、丁寧にアクを取り続けることで生まれる雑味のないまろやかな味わいが特徴。麺を引き締め、『涼か』特有の食味を生み出してくれます。

北上水系の水

東北最大の河川として知られる北上川。清らかな水の流れは、岩手県の弓弭の泉から湧き出すと南へ向かい、当製麺所が本社を置く登米の大地を潤し、果ては石巻の追波湾へと注ぎます。うどんの材料はシンプルそのもの。小麦と塩とをつなぎ、その旨みを引き出すのは恵みの水です。『涼か』の絹糸のような美しさは、清冽な川の流れも思わせます。

冷たくても温かくても美味しさそのまま

なめらかな細麺を一口噛めば、もっちりとした歯ごたえに驚くことでしょう。細いのにコシはしっかり、他にはない味わいです。温めても歯ごたえはそのまま。今年の『涼か』は、夏だけでなく秋口にもおすすめしたい極細麺です。

 

開発者のこだわり

開発部企画開発統括課長
千葉真江

時間は美味しさの大切なエッセンス
極細麺である『涼か』は、私たちのものづくりの根底にある手間も時間も惜しまない追求の精神をとりわけ反映した麺です。手延べの製法では、麺を休ませる「ねかし」と、麺をねじりながら少しずつ延ばす「より」の工程を何度も繰り返して、麺を延ばしていきます。麺をより細く長く延ばす『涼か』は技術的に難しい麺。途中で切れてしまわないよう、この工程を特に丁寧に行う必要があるのです。
「ねかし」はひたすら待つ工程ですが、麺に粘り気や弾力を生むグルテンはこのとき造られ、旨みの熟成も進みます。時間は美味しさの大事なエッセンスなんですね。よりよい熟成のために、ねかしの時間はその日の気候や麺の状態に合わせて調整します。これはまさに職人技です。今年は麺つゆも新しくなり、うどんをより引き立てる味わいに進化。昨年とはひと味もふた味も違う美味しさをお楽しみください。

 

 

 

麺職人 矢内崇義

数え切れない試作の末に
採用した小麦は水を吸いにくい品種で、水分や時間の管理がこれまで以上に重要になりました。また、小麦が変わるということは、原料全体の配合や製造工程も一から見直すことになります。水や塩の配合、小麦が水を吸ってからの熟成具合、時間、温度、湿度など、全てが調和するバランスを見つけるのには苦労しました。数えきれないほどの組み合わせを試し、その度に社員で試食を繰り返して、「これだ」という味に辿り着いた時は満場一致でした。工程としては麺の熟成時間が長くなり、生産効率は下がったものの、美味しさには代えられません。細さとコシという相反するものへの挑戦でしたが、自信を持ってお届けできる味が完成し、嬉しく思います。『涼か』の美味しさが際立つ、さっぱりとした『さば出汁』との組み合わせもおすすめです。ぜひお試しいただきたいですね。